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森、道、市場2021に「坂本美雨+小室哲哉」として出演 

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2021.6/11 森、道、市場2021 遊園地編 
坂本美雨+小室哲哉

愛知県・蒲郡市 ラグーナテンボス

Live Report

6月の夕暮れ時。
昼間の強い陽射しが置いていった熱を気持ちのよい海風が忘れさせてくれる時間帯。海辺の遊園地に設けられたステージの上には、ひとすじの飛行機雲が浮かんでいた。夕焼けのグラデーション、ブルーグレーの夏雲の上にまっすぐな線がひときわ白く輝いている。

小室哲哉坂本美雨、二人のステージは2015年ごろからピアノコンサート、ディナーショーなどさまざまな形で開催されてきた。日本国内ばかりでなく、上海や台湾など海外でも催され、小室哲哉の名曲の数々が坂本美雨の美しい声で歌い継がれている。
今回の「森、道、市場」への出演は2017年12月の大阪でのディナーショー以来、実に約3年半ぶりの共演となった。

今回のバンドメンバーは、坂本美雨と同じように「小室哲哉TM NETWORKのファン」と自ら公言してやまないクラムボンのミトがベースとして参加。ギターは中村佳穂、KID FRESINOなどの人気アーティストのサポートを務める西田修大。もちろんこの4人でのセッションは初となる。

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拍手の中、ステージにミトさんと西田さん、そして美雨さんが登場。オープニングは「THE NEVER ENDING STORY」。原曲はご存知の通り、ジョルジオ・モロダー作曲の映画のテーマソングであり、2005年に美雨さんがカバーし、TVのCMソングとして話題となった曲。美雨さんの透明感のある、のびやかな声が会場内に響き渡っていく。

レーシーな白のガウンドレスをまとった美雨さんが、「頼もしい仲間」という意味を込めてなのだろう、ミトさんと西田さんのことを「風神・雷神のふたり」と紹介する。

続いて…
「友達に電話して、『出て!』っていったら『いいよ!』って言ってくれたので」とオファーの経緯を交えつつ、小室さんを呼び寄せる。
ひときわ大きな拍手が沸き起こる中、にこやかに小室さんがステージに表れる。

「話したいことはたくさんたくさんありますが、まずは聴いてください。この夕暮れにぴったりです。」と美雨さん。2曲目はTM NETWORKの「Still Love Her」。アニメ「シティーハンター」のエンディングテーマとして知られ、近年公開された映画版においても使用された。2021年にこの曲を小室さんの生演奏で、しかもフェスで聴いていることは夢なのでは?と錯覚しそうな感覚に襲われる。小室さんのピアノを中心に、にじむようなギターの音色。夕闇の切なさとあのメロディと、とても優しい歌声が折り重なる。

途中、一時風が強くなり、小室さんの楽譜が飛んでしまうというちょっとしたハプニングが発生。「助けて~!」「誰かガムテープ持ってないですか?」と助けを求める小室さん。思わぬ風のいたずらであったが、小室さんのかわいい発言に客席は一層なごやかな雰囲気に。

「2年前の『森、道、市場』に出た時、『WOW WAR TONIGHT』をみんなで歌ったのが忘れられなくて。次に小室さんと共演するとき、最初はここでやりたいと思っていたのが叶いました!」と力強く、とてもうれしそうに話す美雨さん。

次はglobeの「Can’t Stop Fallin’ in Love」。
西田さんのアコースティック・ギターがイントロを奏ではじめ、染み入るような美雨さんのボーカルに小室さんのコーラスが重なる。なんて贅沢な音楽の時間。ラップ部分では観客に「手伝って~」と美雨さんが叫ぶ場面も。声が出せない今、拍手のレスポンスがどうしても少しもどかしい。でもきちんと拍手で応じるオーディエンス。そこにはもう素敵な一体感が築かれていた。


美雨さんのことば。
「私はずっと小室さんの音楽を聴いて育って、体の中に染みついているので、いろんな年代の小室さんの楽曲を歌ってきました。また小室さんの楽曲たちを歌い継いでいきたいな。そのひとりでありたいな。何歳になっても。
もちろんオリジナルは素晴らしくて、その人の声の説得力があります。いい楽曲、いい歌詞というのは何回歌っても、誰が歌っても響くんだと歌うたび思います。だから、私は今日は届けるためにここにいる、というよりは、みんなの体の中の歌を代弁するような気持ちで小室さんの隣に立っています。そんな日があってもいいかな?と。」

そして、ステージの上には小室さんと美雨さん二人だけが佇む。
「これは…2000年!20年以上経ってしまいました…沖縄サミットのために作られた曲です。」と感慨深そうに紹介する美雨さん。安室奈美恵の「NEVER END」。二人のピアノと歌声だけが海風の中に広がり、漂い、浮かび上がって空に舞い、海のかなたに消えていくようだ。純粋でまるで澄んだ海の青さのような響きだった。共鳴していた。

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ミトさん「今日が一番自分の人生のピークだと思っています。本当にそう。明日の自分のクラムボンのライブを全部忘れてしまいそう。こんな貴重な機会を与えてくださった坂本美雨さんに感謝します」と、小室さんとセッションできることの喜びを語る。

TM NETWORKのアナログレコードをDJのイベントで全部かけきったのは僕しかいないと思います。『Twinkle Night』の『"D"のテーマ』を爆音でかけながら、あがれ~!とか言ってました!それが私です!」と小室さんへの思いの丈を存分に伝えていた。

すると、即興で「吸血鬼ハンター"D"」のフレーズを弾き始める小室さん。
「泣くからやめてください」というミトさん。
それでも弾き続ける小室さん!会場からは拍手がやまない。

続いて美雨さんが「I’m Proud」を「16歳の時にカラオケで歌ったことがきっかけでデビューしました。今日は当時の原曲のトラックで歌います。そんな曲を巡り巡って歌わせてもらいます。みんなの体の中にも眠っているはず。」と説明。ストリングスの華やかさと小室さんが弾くピアノが心地いい。1996年に華原朋美の3枚目のシングルとして発売され、発売6週でミリオンセラーとなった、いうまでもない大ヒット曲。聴いているとロサンゼルスのビルの屋上でヘリコプターから空撮されたこの曲のPVを思い起こした人も多かったのではないだろうか。そこから長い年月が経っても、曲のきらめき、ときめきは変わらない。

「最後の曲になります 。弾いてくれてる。あ、4つ打ちが聴こえてきた。」
小室さんがメロディを奏でだす。Aviciiの「Wake Me Up」のフレーズ。
どこからともなく手拍子がはじまり、そして…「Get Wild」の旋律。
説明するまでもなくTM NETWORKの名曲。小室さんのピアノに拍手の音もどんどん高まっていく。声は出せなくとも一気に高揚感が漂う。小室さんのソロのあと、西田さんのギターがかき鳴らされる。そしてこの曲といえばベースライン。ミトさんはベースの存在感を出しながらも、小室さんのピアノをひきたてるように、邪魔しないように奏でている。
どこにもない新しいアレンジ。間奏はとても抒情的で、そして激しく。2021年の「Get Wild」もやっぱりかっこよくて、期待値なんかはるかに超えていった。よく知っている曲なのに、全く知らない展開に心が沸き立つ。

この「Get Wild」にはどうやら小室さんのアドリブで、今は亡きAviciiの「Wake Me Up」、そして「Heaven」がフィーチャーされていたらしい。

美雨さんが最後に改めてメンバー紹介。ギターとベースの二人を紹介した後
「紹介したら終わっちゃう。終わりたくないなあ。」
まるで会場にいる全員の気持ちのようなつぶやきだった。
そして「愛する先生、小室哲哉~!」
ひときわ小室さんのピアノの音が響く。
演奏が終わると、「小室さーん」と呼びかける観客の声に手を振り、客席近くギリギリまで足を運ぶ小室さん。こちらは内心、ステージから落ちてしまうのでは?とハラハラ。
拍手がやまない中、出演者4人が並んで手をつなぎ、オーディエンスへのあいさつをしてステージを去っていった。
もう時間だから、みんな大人だから、アンコールがないことは十分わかっている。それでも観客の拍手は鳴りやまなかった。


気づくともう夜が訪れていた。遊園地のイルミネーションが幻想のようにきらきら輝き、このライブはやっぱり夢だったのかもしれない。

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「森、道、市場」に小室哲哉。あれ?少しジャンルが違うかも?と感じた方も中にはいたかもしれない。だが、そんなことはあまり関係がないように思う。なぜなら小室さんは想像の範疇を超えるほどに「変幻自在」だから。

今回なら「森、道、市場2021」仕様の「小室哲哉」を魅せてくれるのであり、それは言い換えれば二度と同じステージはない、ということでもある。
実際、今回「森、道、市場」に出演したあらゆるジャンルのミュージシャンたちが「坂本美雨+小室哲哉」のライブをわくわくしながら、つまり観客と同じように心から楽しんで見ていたそうだ。
そして小室さんの演奏を観るたび、確固たるオリジナリティと表現方法の引き出しの多さに気づかされ、驚かされてしまうことにきっと誰も抗えないだろう。

観客はもちろん、共演するアーティストをも心から魅了してしまうゲストなんてそうはいないのではないだろうか。
たくさんの人が「小室さんの音楽」という共通項でつながっている。それぞれの大切な思い出と共に。それはきっと歳をとっても、どこにいても、これからどんなことが起こっても変わらないのかもしれない。

残念ながらAviciiはもういなくて、新しい曲を二度と聴くことはできない。
でも、小室哲哉はここにいる。ここにまたいてくれている。
そして小室さんがこうして新しい試みに挑戦し続けていることに胸を打たれ、心が揺さぶられる。

音楽のサブスクはとても手軽で便利で素晴らしい。でも、五感でフレキシブルに音楽を感じられる、エモさはやっぱりライブだ。今を表現してくれるアーティストのたたずまい、まぶしいライトや風の感触、身体の揺れ、足元から感じる響き、楽しいMC、オーディエンスの拍手と熱気。
ライブ中の「本当に音楽が必要だって思います。」という美雨さんのことばに、観客は心から賛同するように大きな拍手を送っていた。

ステージ上での小室さんにまた会える日を楽しみに。そしてこのメンバーでの再演を心待ちにして。
そして何より、誰もが安心してライブを楽しめる日が早く訪れますようにと願って。

【森、道、市場2021 坂本美雨+小室哲哉 Setlists】
1.THE NEVER ENDING STORY 
2.Still Love Her
3.Canʼt Stop Fallin’ In Love
4.NEVER END
5.Iʼm Proud
6.Get Wild

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