ARCHIVE

Tetsuya Komuro's archive site

父母ヶ浜芸術祭Vol.0オープニングライブに出演 TK/MUSIC/DESIGN/父母ヶ浜 レポート

f:id:TECCI:20201109181253j:plain

2020.10/31 父母ヶ浜芸術祭Vol.0オープニングライブ 
TK/MUSIC/DESIGN/父母ヶ浜
香川県・父母ヶ浜


四国、香川県三豊市にある父母ヶ浜。この瀬戸内海に面した穏やかな遠浅のロングビーチでは夕暮れ時には天空を映し出す鏡のような光景が広がり、その自然豊かな美しさが近年海外でも話題となっている。今回、この地を守るために長年活動されてきた地元の人々が中心となり、多彩なアートの実験の場としてこれまでにない芸術祭が開催された。

そのオープニングとして10月31日に小室さんによる浜辺でのライブ演奏が行われ、その模様はライブストリーミングとして配信された。

f:id:TECCI:20201109175254j:plain

Live Report

まだ太陽が水平線の上、中央に佇む午後4時過ぎ。浜辺には特設のステージとグランド・ピアノ、Moog Oneなどの機材が置かれていた。この場所にグランド・ピアノが置かれたことは今まであったのだろうか?遠浅の美しい浜辺にグランド・ピアノが置かれただけでもアート作品のひとつのように見える。


観客席の後方には巨大なスクリーンが張られ、脇田玲氏(慶應義塾大学環境情報学部教授・同学部長、現代美術家)の映像作品が映し出される。そして静かに小室さんの音楽が流れはじめた。二人の共演は2017年11月の日本科学未来館での「MUTEK.jp」以来である。心地よい海風に雫のような響きが広がり出す。力の働きを可視化させた脇田氏の映像はこの浜の波なのか、それとも他のものなのか。不思議なうねりと音色はこの後のライブへの高揚感をますます掻き立てさせられた。

10分超のインスタレーションの後、ステージの上に小室さんが現れた。グランド・ピアノに向かい「NEVER END」の旋律が奏でられる。小室哲哉の「音」が景色を変えていく。この音は唯一無二なのだと心の底から感じられた。この曲ではじまることの意味、海との親和性を考えさせられる。そして凄いのはすべて新しい音、アレンジであることだ。Moog Oneが操られ、次の曲は今年7月に乃木坂46に提供した復帰第一作となる「Route 246」。アグレッシブなシンセの演奏は健在だった。そして一瞬の静寂のあと、「My Revolution」のイントロが響き渡った。2つの音でそれとわかるのだから名曲のインパクトはなんと強いことか。それは深い海のような透明感のある印象的な音だった。

遠浅の浜辺にはライブの観客以外にも観光客がたくさん訪れており、楽しそうに写真を撮ったり、散策したりしているのが見える。ステージの向こう側のその光景もすべて含めて、まさに「絵になる」情景だった。
演奏は「SWEET 19 BLUES」、「DEPARTURES」、「YOU ARE THE ONE」と続き、シンセとピアノの織りなす音が浜辺一体を包んでいく。そして聴き覚えのあるサンプリングボイスが流れての「BOY MEETS GIRL」は海原のダイナミックな広がりを感じさせた。

 

日が少し沈み、空がピンクのグラデーションに変わったころ、しっとりとはじまったのがアイルランド民謡の「Danny Boy」。それは意外な選曲だった。誰でも一度は耳にしたことのあるこの曲のメロディはどこか哀愁や望郷のような切なさ、懐かしさを抱かせる。そして「Robinson Crusoe」。ちょうど日没と重なり、演奏する小室さんの向こう側にオレンジ色の大きな太陽が沈んでいき、白日夢のような光景が続く。

ロマンティックな時間のあとは「Can You Celebrate?‐Art Mix」。ここから会場の空気は一変。小室さんはDJセットを操り、突然海辺のフェスに来たような錯覚に。小室さんが両手を挙げると観客は待っていたとばかりに踊り出しはじめる。そこにクロスオーバーするように「GET WILD‐SICK INDIVIDUALS Remix」のフレーズが聴こえ、どこからともなく歓声が上がった。つい先日も「GET WILD退勤」がツイッターで話題となり、トレンド入りしたばかりの小室哲哉ヒストリーには欠かせない一曲。アレンジが加わりレイブ・パーティーのような盛り上がりに。そして少し冷たい海風が心地よく吹く中、夕焼けのピンクのグラデーションに夕闇のブルーがほんのり加わり出したころ、シンセの音を残して小室さんは手を振りながらステージを去っていった。

 

ピアノとシンセサイザーの音色が響く穏やかな浜はまるで情緒があるようだ。舞台の場面転換のように、曲や音が変わるたびに見える景色もどこか変わるような気がした。小室さんの音楽が風景を豊かにし、ふさわしく彩っていた。自然と電子音楽の融合を、波や海の生き物や空を飛ぶ鳥たちは聴いただろうか。どう感じただろうかとふと思った。

f:id:TECCI:20201109175000j:plain

f:id:TECCI:20201109175500j:plain

なお、この後別会場では特別なアフター・パーティーが催され、ディナー付きの少人数制のピアノ・コンサートが行われた。芸術祭会場では期間中連日、小室さんが音楽を担当した脇田氏のインスタレーション「Triplet」が上映された。
ライブの翌日には「父母ヶ浜子供未来教室」と題されたワークショップが開催され、将来を期待されている中学生・高校生を対象に、小室さんが講師となり音楽の講義を行った。ワークショップで子供たちが作った曲は小室さんが持ち帰って添削し、芸術祭最終日の11月8日に会場で再度オンラインによる授業を行い、子供たちにフィードバックされたという。「小室先生」の手厚い授業は子供たちに大きな刺激と夢を与えたのではないだろうか。

今回の父母ヶ浜芸術祭参加は「新生・小室哲哉」のデビューでもあったと思う。9月からの映像配信「GroundTK」を皮切りに、全く新しい試みを一からスタートすることは表現者にはとても大変なことだと推測されるが、今回は更に受け手の想像をはるかに超えていったステージだった。次回の「TK/MUSIC/DESIGN」があるなら、そこではきっとまた新しい驚きと感動が待っているだろう。自然と音楽の融合、風景との融合。有意義なコラボレーションが世界中無限大にあるのではないかと想像してやまない。イベントが終了して1週間。今回の配信が終わってしまった寂しさと共に、もう次への期待が入り交じっている。

追記 From てっち衣装部
ライブ当日の衣装は残念ながら特定できませんでしたが、11月8日のオンライン授業の際お召しになっていたのはこちらのSaint Laurentのピンクのシャツだったようです。かわいいですね。

f:id:TECCI:20201109190419j:plain

 

父母ヶ浜芸術祭公式You Tube


小室哲哉氏 父母ヶ浜芸術祭Vol.0に向けたメッセージ

 

三豊市ホームページ


 VOGUE JAPAN 


ELLE Japan on Twitter

四国新聞WEB朝刊

父母ヶ浜芸術祭 on Twitter

父母ヶ浜芸術祭 on Instagram

 小室哲哉(TK)公式 on Twitter

小室哲哉公式 on Instagram

 

てっち衣装部 on Twitter