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2021.11.26-27「Tetsuya Komuro Rebooting1.0」ライブレポート

f:id:TECCI:20211204133004j:plainTetsuya Komuro Rebooting1.0 11/27 1st Stage  Billbord Live Tokyo

 

そしてまた、ビルボードからはじまる。

2021年10月1日の「完全復帰宣言」から約2か月。
同時にTM NETWORKも「再起動」させ、配信ライブを行うなど精力的に活動している小室さん。
六本木ミッドタウンの「ビルボードライブ東京」で11月26日と27日の2日間、ソロ・ライブ「Tetsuya Komuro Rebooting1.0」が開催された。チケットは全4公演が即座にソールド・アウト。ビルボードでのライブは浅倉大介さんとのユニット「PANDORA」の公演以来、実に約3年ぶりとなった。
ここでは、小室さんの63歳のお誕生日当日である、11月27日のファースト・ステージを中心にレポートしたい。

開演。上方からステージに向かって、客席を縫うように、にこやかに手を振り階段を下りてくる小室さん。満員の客席は「おかえりなさい」と言わんばかりの大きな拍手で迎えた。

小室さんの衣装は鮮やかなサテン生地のブルーのサンローランのシャツ。黒のローファーを履かれているのは珍しい。黒のスリムなデニムにセリーヌショッキング・ピンクのソックスがとても映えている。

後日、このコーディネートについて小室さんは「マイケル・ジャクソンの衣装が好きでフィーチャーしてみました。」と話されていた。ちなみに両日ともファースト・ステージはこちらのブルーのシャツ、セカンド・ステージでは赤に黒のドットのキュートなシャツをお召しになっていた。
(お衣装について、特定など詳しくはこの記事の最後に掲載しています!)

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ステージに上がった小室さんはグランドピアノの前へ。1曲目は新曲の「Traffic Jam」。この日よりファンコミュニティ「TETSUYA KOMURO STUDIO」で数量限定発売となったレコード・アルバム「JAZZY TOKEN」からの一曲。

新境地ともいえるようなジャジーな旋律は、待ちわびた心を躍らせる。ビルボードという空間にふさわしく、シャープでソリッドな都会的な情景を思わせるような響き。小室さんとジャズの融合はこんな風になるのだという新しい発見。そして鍵盤を叩く指使いはしばらくお休みしていたとはとても思えないなめらかな動き。ああ小室さんが帰ってきたのだという実感が沸いてくる。

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「お久しぶりです。」と小室さん。TM NETWORKとして1984年にデビューしてからの楽曲、たくさんのアイドルへ提供した曲、ミュージカルや映画に書いた曲、各年代のそれらを濃縮してお届けしますと今日の構成について説明。

2曲目は宮沢りえさんに提供した、ファンにはよく知られている名曲「My Kick Heart」。
「この方のデビューした映画の音楽を担当して、デビューシングルもプロデュースさせてもらいました。今も変わらずおきれいですね。来月舞台を見に行かせてもらおうと思っています。この曲は昔で言うB面、カップリングの曲ですが、今日は僕が弾き語りみたいに歌ってみようと思います。」と小室さん。

「My Kick Heart」は以前テレビの企画で開催されたglobeのアコースティック・ライブで歌われたり、2014年秋にビルボード東京と大阪で小室さんが坂本美雨さんと共演された際にも美雨さんのボーカルで披露されたことがある曲。今日はこの曲が小室さんのボーカルで聴けるという、うれしいサプライズに拍手が起こる。歌詞も心に染みるようなとても素敵なナンバー。この曲に涙する方も多かったのでは。間奏には華原朋美さんの「I’m proud」のメロディが織り交ぜられる。わかる人にはわかる、フレーズの登場にはっとする瞬間。それは小室さんにしかできないことで、ソロ・ライブならではの自由さだろう。そういった隠し味的な工夫がこのライブ全体を通してちりばめられていたのも印象的だった。
この曲はしっとりと全編ピアノで演奏され、ライブでは久しぶりの小室さんの歌の世界に引き込まれていった。

グランドピアノから、シンセサイザーの並ぶステージ中央へと移る小室さん。
「今度復刻するこのシンセ(ローランド「JD-08」。「JD-800」の復刻版)のプリセット53番という音色でたくさんの曲を作りました。今日ここに来るとき、コンビニに寄ってきたんですけど、trfの『寒い夜だから』が流れていて。ああ冬になったんだって思いました。」そして「寒い夜だから」のフレーズを弾き始めると拍手が沸き起こる。「ね、弾けたでしょ。2オクターブしかないんですけど、これだけの鍵盤で弾けちゃう曲なんだなって初めて知りました。」

1992年に小室さんが音楽を担当した音楽座ミュージカル「マドモアゼル・モーツアルト」。今年10月に東宝の制作で再演され、大変話題となった。小室さんも今回の再演を観覧したとのこと。その舞台で流れる音楽について「モーツアルトの音楽もいいけど、それ以外の曲もなかなかいいメロディーじゃない?って思って。まあ自分なんですけどね。案外よかったんじゃないかな。」と観客の笑顔と拍手を誘っていた。「では、『マドモアゼル・モーツアルト』の曲をコンパクトに、クラシックとポップスを織り交ぜた組曲みたいにやってみますね。聴いてみてください。」

「マドモアゼル・モーツアルトのテーマ」の荘厳で重厚なイントロが響く。シンセサイザーを操り、音を重ねていく様子は、ひとりでオーケストラを操っているようでもあり、往年の楽曲たちが2021年の最新の音色で美しく彩られて表現されていく。
そしてやはり、いうまでもなく小室さんにはスポットライトが当たる場所がとても似合っていて、そこが一番輝く場所だと確信する瞬間でもあった。
「ある音楽家へのエピタフ」から、ピアノに移動しての「Love 〜insert:Sonata for Piano No.11K 331 by Wolfgang Amadeus Mozart〜」、カテドラルの美しい音色で「永遠と名付けてデイドリーム」が奏でられた。

「どうもありがとう。今日の朝、メールが来ていて、てっちゃんお誕生日おめでとう、って書いてあって。ミュージシャンでなかなかてっちゃんて言ってくれる人は珍しいんですけど。今度テレビでまたこの曲歌うよーって言ってくれていまして。その曲、『My Revolution』と『Teenage Walk』を。」と言って渡辺美里さんに提供した2曲を紹介する小室さん。

「Teenage Walk」のきらきらと光るようなメロディをプロローグのように奏でてから「My Revolution」、そしてまたエピローグに静かに再び「Teenage Walk」。
小室さんが「作曲家として初めて認められた曲です」と説明した「My Revolution」は
おそらく渡辺美里さんにとっても、同じように大切な代表曲のひとつであり、これからも長く愛され、歌われていくだろう。

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なお、26日のファースト・ステージと27日のセカンド・ステージでは、安室奈美恵さんに提供した「NEVER END」も演奏された。2020年10月に香川県の父母ヶ浜で行われた野外でのソロ・コンサートで小室さんはオープニングにこの曲を演奏しているが、今回はその時のアレンジをさらに進化させたバージョンになっていた。海と空の果てしなく普遍的な広がりを彷彿とさせるような、まるで宇宙空間や自然が生み出す音の共鳴を感じるような、壮大さが胸を打つ。ぜひとも音源として残していただきたいと思う。

26日のファースト・ステージでは昨年乃木坂46に提供したヒット曲「Route246」も演奏されたが、残念ながら「スタッフにちょっと長いって言われてカットになりました。」と小室さん。

次にピアノの前に座り「今度は90年代の曲ですが、彼女はこれを歌ったときはまだ18歳で19歳になる数か月前だったんですね。今回ビルボードで演奏するにあたって、もう一回アルバムを聴き直してみて。まだ18歳できっとブルースの意味をきっとわからないながらも、雰囲気を出してくれていて、感性がすごいなと思いましたね。あと、プロデュースもすごいな、と。(笑)」会場からは拍手が起こる。そして「今日はブルージーな感じで弾いてみたいと思います」と「SWEET 19 BLUES」。ラストには同じく安室さんの大ヒット曲「CAN YOU CELEBRATE?」の心に響く一節が加わり、会場の拍手をさらに誘っていた。


小室さんが話していたのは1996年7月にリリースされた安室奈美恵さんのセカンド・アルバム「SWEET 19 BLUES」のこと。累計330万枚以上の売り上げを記録したこのアルバムは、当時19歳を迎えようとしていた安室さんにちなんで全19曲入りとなっている。

18曲目にアルバム表題曲の「SWEET 19 BLUES」が入っており、最後の19曲目の「...soon nineteen」は「SWEET 19 BLUES」の歌詞の一部「SWEET SWEET 19 BLUES~ 誰も見たことのない顔、誰かに見せるもしれない」の部分を安室さんが囁くように、つぶやくように歌っていて、その構成がとても気に入っていると小室さん。
このアルバムは19歳を迎える当時の安室さんへの、小室さんからの真心のこもったお誕生日プレゼントのようにも思える。安室さんの18歳の輝きを封じ込めた宝石のような名盤と言えるだろう。

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ビルボードの都会的な空間とライティングに小室さんのシャツのサテンのブルーが映え、昼公演なのに真夜中の景色のような、または深い海の底にあつらえられたステージを観ているような気分になる。

小室さんが曲を生み出した当時を振り返りつつ、曲にまつわるエピソードをていねいに解説しながら、披露していく姿は、さながらおしゃれなスタジオ、ラボの公開実験、または音楽と空間のインスタレーションのようにも見えて、とても貴重で上質な、楽しい音楽の時間が展開されていく。

「先ほど『マドモアゼル・モーツアルト』の話もしましたが、ミュージカルをやってみたくて。他のふたりの(TMNETWORKの)メンバーにどうかな?って聞いてみて。今回初めて木根さんの話をしますが(笑)大阪に行く新幹線の中で『木根さん、本書かない?』って言ったのがはじまりです。」

「ロンドンの部屋でピアノに向かっていて。コードをおさえて、いい音だな、なんかできそうだなって。そこから半音あがったんですね。(コードを弾きながら)このコードができなかったら、(『CAROL』は)たぶんできなかったと思います。今日はそれをコンパクトに組み立ててみました。いろいろ思い浮かべながら聴いていただきたいです。では『CAROL』を。」


CAROL組曲はピアノによる「A Day In The Girl's Life」からスタート。時に抒情的な旋律を奏でながら「Carol (Carol's Theme I)」へ。そしてシンセブースに移っての「Just One Victory (たったひとつの勝利)」という構成となっていた。

1988年12月に発売されたTM NETWORKの6枚目のオリジナル・アルバム「CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜」はご存知の通り、ストーリーを盛り込んだコンセプチュアルなアルバムであり、シアトリカルなミュージカル仕立てのコンサートは今や伝説といっても過言ではないだろう。
アルバム、小説、アニメと多角的なアプローチを展開し、「CAROL」はアーティスト発メディアミックスの元祖ともいうべき画期的な方法を編み出した。現在ではごく一般的な手法となっているが、このTM NETWORKが生み出し、残した功績はもっともっと世に知られるべきなのではないだろうか。
また、のちに小室さんはインタビューで「海外でもプロデュースという立場だったら渡り合えると思った、節目になったアルバム」と述べている。「CAROL」作成時はプロデューサーという役割での自身の才能を意識しはじめたターニングポイントの時期でもあったようだ。

ここでビルボード名物、ステージのカーテンが開く。晩秋の秋晴れの土曜日、昼間の明るい景色が広がる。真下にはスケートリンクが見えてたくさんの人がスケートを楽しんでいた。
「今日は早い時間の公演だから、(カーテンを)開けようか迷ったのですが、でも明るくてきれいですね。僕も昼にライブをやることがあまりないしね。スケートリンクがあるなんて、ちょっとニューヨークのセントラルパークでライブしているみたいじゃない?」

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「ソロで最初に作ったのがこの『RUNNING TO HORIZON』で。今年の2月にジャズバージョンみたいなものを作ってみたのですが、それが結構評判がよくて。」と話す小室さん。

2021年2月6日にニコニコ生放送での「TETSUYA KOMURO MUSIC FESTIVAL」に出演した際に初披露され、4月28日に配信リリースされた「RUNNING TO HORIZON (206 Mix)」について説明。
「キーが高いところがあって。ちょっと厳しいので歌えるところだけ歌いますね。あとは皆さんの心の中で歌ってみてください。」
アニメ「シティーハンター3」のオープニング・テーマとなっているこの曲のオリジナルは1989年に発売された小室さんの記念すべきソロ・デビューシングル。今年リ・アレンジされたシティポップな「RUNNING TO HORIZON(206 Mix)」はジャジーなピアノが気持ちよく、心地よい高揚感、爽快感を感じる。ベースラインが効いたアレンジは大人らしさを醸しだしていて、ビルボードという特別な場所にとてもよく似合っていた。

 

そしてラストはピアノでのglobeのメドレー。「Feel Like dance」、「Precious Memories」、「DEPARTURES」の3曲。しっとりとゆっくり静かにこのライブの幕が下りていくような、けれども余韻と微熱を残してゆくような演奏だった。

そして、演奏が終わると「ありがとう」と一言。上方や左右にも隈なく手を振り、笑顔でステージを去っていく小室さん。階段を上り、姿が見えなくなるまで、ひときわ大きな拍手が会場を包んでいた。

 

ライブの臨場感は小室さんが歌う声や鍵盤を弾く音を聴けること、ライティングや拍手の高揚感、会場の熱量は生ならではの感覚が味わえる。

一方で配信のメリットもたくさんある。世界のあらゆる場所で楽しむことができるのも素晴らしいし、ライブ後も期限までアーカイブが観られるのはとてもうれしい。

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ここで少し、今年の小室さんの演奏配信の動きについて振り返っておきたい。

今年の1月下旬ごろ、日本にも音声SNS「Clubhouse」が上陸した。当初は招待制であったが、著名人を中心に話題となり爆発的に流行し、瞬く間に広まっていった。小室さんもClubhouseでたびたびピアノ、キーボードの演奏を配信されるようになり、貴重な演奏が無料で聴けるということもあって、オーディエンスの数がホール・コンサートの動員並みになることもあった。
その後、小室さんは2021年7月に会員制ファン・コミュニティアプリの「fanicon」内で「TETSUYA KOMURO STUDIO」を開設。7月9日より毎週金曜日のライブ配信「TK Friday」がスタートした。毎回様々な企画でファンを楽しませている。
先日11月26日にはビルボードでの公演後、小室さんのバースデー・カウントダウンの配信があり、お誕生日を会員みんなでお祝いすることができた。この金曜日の配信は休むことなく毎週行われていて、すでに22回目を数える。

小室さんは金曜の配信時に演奏するだけではなく、深夜のゲリラ・ライブを不定期に敢行。思いつくままに様々な楽曲を演奏されている。ゲリラ・ライブは文字通り突如配信されるので、まるで流れ星のよう。リアルタイムで遭遇できたら本当にラッキーかも知れない。アーティストが弾きたいときに弾いている演奏をリアルタイムで楽しむことができるなんて、本当に夢のような時代がやってきたと感じる。

 

小室さんが今年初めごろから、形を変えつつ進化を遂げながら、続けている配信での演奏も、きっと今回の「Tetsuya Komuro Rebooting 1.0」のアイディアの源となっているだろう。そして、ここに小室さんのストイックな一面が分析できると思う。
勝手な解釈に過ぎないが、小室さんは今までに作ったたくさんの曲をどう表現していくのが今の自分らしいか、助走されている期間中にも模索を続けてその答えを見いだしたのだろうと思う。すべて2021年仕様にアップデートされていて、新鮮な感動を覚えた。すでに年明けの1月にはビルボード大阪、ビルボード東京での公演「HIT FACTORY #1」が予定されている。TM NETWORKの動きも含め、これからの活動にどのような展開が待っているのか、心から楽しみに期待していたい。

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2021.11.26-27「Tetsuya Komuro Rebooting 1.0」

Tetsuya Komuro’s coordinate

1st Stage
Shirt,Shoes:Saint Laurent
Socks:CELINE

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2nd Stage 
Shirt,Shoes:Saint Laurent
Socks:CELINE


★11/27 2nd Stageのみ
Bracelet:CELINE

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★客席には小室さんのステッカーが置いてあり、うれしいおみやげになりました。

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■配信ライブ情報 ※この配信は終了しています
小室哲哉 Tetsuya Komuro Rebooting 1.0 ONLINE SHOW
LIVE LOVERS from Billboard Live】
販売期間:~12月4日(土)21:00
視聴可能期間:~12月4日(土)23:59
【視聴方法】
オンライン視聴料:¥3,500-
Club BBL会員割引:¥2,800-

https://eplus.jp/tk-st/

 

■最新公演情報
小室哲哉 Tetsuya Komuro 「HIT FACTORY #1」】
ビルボードライブ大阪
2022年1月8日(土)
1stステージ 開場15:30 開演16:30
2ndステージ 開場18:30 開演19:30

ビルボードライブ東京
2022年1月21日(金)
1stステージ 開場17:00 開演18:00
2ndステージ 開場20:00 開演21:00

2022年1月22日(土)・23日(日)
1stステージ 開場15:30 開演16:30
2ndステージ 開場18:30 開演19:30

www.billboard-live.com

fanicon.net